Vol.48 心理的瑕疵物件って知っていますか?告知事項アリ
幽霊より怖い!? 事故物件?心理的瑕疵?とは
不動産の世界には「えっ、そんなことまで気にするの!?」というような、ちょっとマニアックだけど知っておいて損はない情報が山ほどあります。今日はその中でも、知っているようで知らない“心理的瑕疵(しんりてきかし)”について、分かりやすくお話ししていきます。
心理的瑕疵って、なに?
まず、漢字がなんだか難しいですね。「心理的瑕疵」とは、物件そのものに欠陥があるわけではないけれど、“住む人の気持ちに影響するような過去の事情”がある不動産のことを指します。
たとえば、以下のようなケースが該当します。
・過去に自殺や殺人事件があった
・火事で人が亡くなった
・反社会的勢力の事務所が近くにあった
・周囲に迷惑な住人がいる
・宗教施設やお墓が近い
つまり、“見えないけれど、なんとなくイヤだな..”という事情がある物件のことです。まさに、幽霊が出るかもしれない......なんて想像してしまうような背景ですね。
事故物件=心理的瑕疵ではない?
ここで一つ混同されがちなのが、「事故物件」と「心理的瑕疵物件」は同じではない、ということ。事故物件というのは、過去に“事故的な死”があった物件を指します。たとえば、自殺、孤独死、殺人などですね。
一方で、「心理的瑕疵」はもっと広くて、“住む人が心理的にイヤだと感じるかもしれない情報がある”という範囲です。
つまり、事故物件は心理的瑕疵物件の一部ですが、心理的瑕疵物件には事故物件にあたらないものも含まれる、というわけです。
ちょっと例えるなら、
心理的瑕疵 = 苦手な食べ物全般
事故物件 = ピーマン(特に強く嫌われる代表格)
みたいなイメージでしょうか。
総じて業界内では、「告知事項あり」と言われています。
なぜ心理的瑕疵が“幽霊より怖い”のか
「でも別に霊感ないし、幽霊とか気にしないし?」という人もいるでしょう。しかし、心理的瑕疵にはもっと現実的な“恐ろしさ”があります。
①資産価値が下がりやすい
将来売却しようとしたとき、「過去に事件があった物件です」と伝えなければならない可能性があります。当然、それを聞いた買い手は購入をためらうかもしれません。結果として、相場より安く売らざるを得ないことも。
②ご近所からの視線がツライ
「ここ、あのニュースに出てた部屋だよね…」と、近所の人が噂話していたら?何気ないスーパーのレジやクリーニング店での会話が、妙に気になる……なんてことも。
③家族や友人が嫌がる
本人が気にしなくても、同居予定の家族や恋人が「ちょっと無理かも……」と言い出すケースは非常に多いです。特にお子さんがいる家庭だと、不安材料はなるべく避けたいですよね。
告知義務はあるの?ないの?
ここが非常にややこしいポイントです。不動産会社や売主は、原則として“借り主・買い主にとって重要な事項”は説明する義務があります(重要事項説明義務)。
が!心理的瑕疵の場合、「何を、どこまで伝えるか」が非常に曖昧なのです。
たとえば、
自殺が10年前にあったけど、その後何人も入居している → 通常、告知義務なし
直前の入居者が室内で自殺 → 告知義務あり
隣の部屋で事件 → グレーゾーン(周辺環境とされる可能性)
2021年には国交省からある程度のガイドラインが出されましたが、それでも「気になる人にはとことん気になる」し、「気にしない人にはお得な物件」とも言えるのです。
見抜く方法はあるの?
正直、完璧に見抜くことは難しいです。でも、ヒントになるポイントはいくつかあります。
①異様に安い
周辺相場よりも1~2割以上安い場合は、なにか理由があるかもしれません。「お得!」と飛びつく前に、理由を確認しましょう。
② 売主が“法人”になっている
個人から買うのではなく、不動産業者が一度買い取ってリフォームして再販売するケースでは、過去の事情がリセットされることもあります。
③ インターネットで検索してみる
意外とニュース記事がヒットします。「○○市×丁目×番地」などで調べてみましょう。もしくは、あの、有名な、つい見ちゃうサイトもありますね。
④周辺住民に聞いてみる(上級者向け)
ちょっと勇気が要りますが、「この辺ってどんな感じですか?」と聞くと、思わぬ情報が得られることも。
だたし、売主の許可なくの聞き込みは、思わぬトラブルに発展する可能性がありますので現実的ではありません。不動産会社の担当者ですら躊躇するイレギュラーな話です。
それでも心理的瑕疵物件を選ぶメリット
ここまで読んで、「やっぱり心理的瑕疵は避けたい……」と思う方が多いかもしれません。が、実は“割り切れる人”にとってはメリットも大きいんです。
・相場より安く買える
・立地や広さで妥協しなくて済む
・物件自体に物理的な問題はない
「気にしない」「むしろネタになる!」というタイプの方には、掘り出し物として活用できることも。
まとめ
心理的瑕疵は、法律でも説明義務のグレーゾーンが多く、不動産初心者には見抜きにくい領域です。でも、知識さえあれば“避ける”ことも“活かす”こともできます。
・不自然に安い物件には理由あり
・過去の出来事を確認する手段もある
・不安なら不動産会社に正直に聞くのが一番!
不動産は「見た目」や「立地」だけで判断してしまいがちですが、心の中の“もやもや”解消も非常に大事な要素です。
現実的な取引における心理的瑕疵では、事件性がなければ流通量としては少なくありません。フルリノベーションもされて全く気にならないお部屋の状態になっていたり、手つかずの場合は相場よりも安く買えます。
ものは試しで、一度、リノベーションされたお部屋をご覧になってみるのもアリかと思います。
告知をされるか否かは、国土交通省のガイドラインに則る不動産会社は多いですが、正直に聞いてもらっても嫌悪感はありません。
私たちも、たくさんのこうした物件を見てまいりましたが、事件性がなければ、正直、普通の感覚にもなります。でも、なんとなく嫌!って気持ちも分かります。
触れ合えば分かり合えるかもしれない心理的瑕疵物件。
見方を変えれば、お得なのかもしれませんね。