
Vol.148 平屋ブーム再来!2階建てとの違いとは?
平屋ブーム再来!2階建てとの違いとは?
近年、不動産業界でじわじわと人気を取り戻しているのが「平屋(ひらや)」です。
かつては「地方の田舎にある、昔ながらの家」というイメージが強かった平屋ですが、
今や都市部でも注目される存在になっています。
実際に注文住宅の展示場でも、平屋を希望する人が増え、「平屋ブーム再来」と呼ばれるほど。
しかし同時に、
「2階建て」と比べてどうなのか?
コストや資産価値、暮らしやすさ、将来性の面で本当に得なのか?
という疑問を抱く方も多いでしょう。
本記事では、不動産購入を検討している方に向けて、
平屋ブームの背景から2階建てとの違い、さらに購入のメリット・デメリットを解説していきます。
1. なぜ今、平屋がブームなのか?
まずは平屋人気の背景を整理しましょう。
1-1 高齢化社会で「階段いらず」が支持される
少子高齢化が進む日本では、シニア世代の住宅ニーズが増えています。
「足腰に不安があるので階段は避けたい」、「老後は1階で生活を完結させたい」という声が年々増加。
平屋なら生活動線がワンフロアで完結するため、バリアフリー住宅として人気を集めています。
1-2 子育て世代にも意外と人気
平屋はシニア向けの家、と思われがちですが、実は子育て世代にも注目されています。
理由はシンプルで「家族の気配が常に感じられる」から。
子どもが部屋に閉じこもることなく、リビングやダイニングを通じて自然と顔を合わせる間取りが実現しやすいのです。
1-3 デザイン性と「映え」の魅力
最近の平屋は、昔の日本家屋とは違い、モダンでおしゃれなデザインが豊富。
SNSや住宅雑誌で見かける平屋は、勾配天井の広がりや大開口の窓を活かした開放的なデザインが多く、
いわゆる「映える家」として若年層からの支持も集めています。
2. 平屋と2階建ての違い
では実際に、平屋と2階建てを比較してみましょう。
2-1 土地の広さの問題
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平屋:ワンフロアに必要な居住スペースを確保するため、ある程度広い土地が必要。
都市部では土地価格が高いため、郊外や地方の方が建てやすい。
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2階建て:狭い土地でも延床面積を確保できるため、都市部に向いている。
つまり、
「土地価格が高いエリア」では2階建てが有利
「土地が比較的安価で広さを確保できるエリア」では平屋が有利、です。
2-2 建築コストの違い
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平屋:基礎工事と屋根面積が広くなる分、建築コストが割高になりがち。
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2階建て:基礎や屋根の面積をコンパクトに抑えられるため、同じ延床面積なら平屋より割安。
「平屋の方が安いでしょ?」と思われがちですが、実は逆。
坪単価で見ると平屋の方が高くなるケースが多いのです。
2-3 生活動線・家事動線
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平屋:上下移動がないため、掃除や洗濯がラク。シニアや子どもにも優しい設計。
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2階建て:生活空間とプライベート空間を分けやすい。来客が多い家庭では使い勝手が良い。
2-4 日当たり・風通し
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平屋:建物が低いため、周囲の建物に囲まれると日当たりが悪くなるリスクも。
ただし、中庭を設けることで解決できるケースが多い。
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2階建て:2階部分は日当たり・風通しが良い。
2-5 資産価値
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平屋:最近は人気が上昇しているため、中古市場でも一定の需要が期待できる。
ただし立地により価格差が大きい。
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2階建て:市場に多く出回っており流通性は高い。
3. 平屋のメリット
平屋を選ぶ最大の魅力は「暮らしやすさ」。ここでは代表的なメリットを挙げます。
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■階段がない=バリアフリーで安心
■家族のコミュニケーションが自然と増える
■開放感ある間取りを作りやすい
■耐震性に優れる(2階建てより重心が低い)
■将来のリフォーム・増築がしやすい
4. 平屋のデメリット
一方で、注意すべき点もあります。
■広い土地が必要=都市部では現実的でない場合がある
■建築コストが割高になりやすい
■防犯上のリスク(全ての部屋が1階にあるため、侵入経路が多い)
■プライバシー確保が難しい(子ども部屋もリビングに近接することが多い)
5. どんな人に平屋がおすすめ?
■将来を見据えて「一生住める家」を探している人
■郊外で土地を広く確保できる人
■家族との距離感を大事にしたい人
■デザイン性の高い住まいにこだわりたい人
逆に、都市部の狭小地で家を建てたい人やコストを抑えたい人には2階建てが向いています。
6. 平屋と2階建て、資産価値の違い
不動産は「住むためのもの」であると同時に「資産」としての側面も無視できません。
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都市部の利便性が高い土地 → 2階建ての方が資産価値を保ちやすい
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郊外や地方でゆとりある土地 → 平屋の人気が高まり、資産価値も安定しやすい
つまり、「どちらが得か?」は建物単体の問題ではなく、立地条件との掛け算で決まります。
平屋ブームは単なる流行ではなく、
社会の変化(高齢化・家族構成の変化・デザイン性志向)に後押しされた必然的な流れです。
ただし、平屋は「誰にとっても正解の住まい」ではありません。
都市部でのコストや防犯性、土地の広さなど、現実的な制約を踏まえる必要があります。
一方で、2階建ては依然として主流であり、利便性・コスト・資産価値のバランスを考えると安定感があります。
最終的には、家族構成・ライフスタイル・立地条件を基準に、
「どちらが自分に合っているか」を見極めることが大切です。
「平屋ブーム再来」と聞いて飛びつくのではなく、
自分たちの生活を長期的にシミュレーションしたうえで、後悔のない家づくりをしてみてはいかがでしょうか?
記:宅地建物取引士 原田