
Vol.272 売却価格はどこまで妥協するべきか
売却価格はどこまで妥協するべきか
― 相場だけでは決められない不動産売却の現実 ―
「いくらまでなら下げるべきですか?」という質問
不動産を売却する際、ほぼすべての方が悩むのがこの問題です。
「最初はいくらで出すべきか」
「値下げはいつ、どこまで?」
「本当にこの価格で売るしかないのか?」
インターネットで調べれば、
「相場単価〇万円」・「㎡単価はいくら」
しかし、不動産の価格は単価だけでは語れません。
ここを誤解したまま売却を進めると、
1.不動産は「相場通り」に売れるとは限らない
よくある勘違いの一つが、
「相場が〇〇万円だから、この価格で売れるはず」
という考えです。
確かに相場は大切です。
しかし、それはあくまで参考値に過ぎません。
2.なぜ単価だけでは判断できないのか
同じエリア、同じ広さでも、
■築年数
■日当たり
■道路付け
■管理状況
■周辺環境
■売却時期
これらが違えば、需要も価格もまったく変わります。
不動産は、
「いくらで売りたいか」ではなく「いくらなら今、買いたい人がいるか」
で決まる世界です。
3.売却価格を決める本当の優先順位は「需要と供給」
不動産価格を動かしている最大の要因は、需要と供給のバランスです。
■そのエリアに買いたい人がいるか
■似た物件がどれくらい出ているか
■今の市況は売り手市場か買い手市場か
これらを無視して、
「相場より高いから」・「前にこの価格で売れたから」
という理由だけで価格を決めると、
4.仲介専門店が「高い価格」を提示しがちな理由
ここで、少し業界の裏側の話をします。
● 仲介専門店のビジネスモデル
仲介専門店の多くは、
■売買仲介のみ
■成約しなければ収入がない
■営業マンの給料に歩合が大きく影響
という構造です。
つまり、媒介契約を取ることが最優先になりやすいのが現実です。
● なぜ高い査定額が出るのか
売主が一番魅力を感じる言葉は、「他社より高く売れますよ」です。
仲介専門店の営業マンが、相場より高めの価格を提示する理由はシンプルで、
■媒介契約がほしい
■他社に取られたくない
これは、ある意味仕方のない構造でもあります。
ただし、その価格で「売れるかどうか」は別問題です。
また、逆に多角的に事業を行っている不動産会社の視点として、
■買取
■開発
■建築
■賃貸管理
などを総合的に行っている不動産会社は、少し違う点があります。
それは、【「売れない価格」を知っている】ということ。
自社で買い取ることもあるため、
■いくらならリスクがあるか
■いくらなら動きが止まるか
といった、市場のリアルな限界点を把握しています。
□長期的な信頼を重視する
一度きりの仲介手数料よりも、
■次の取引
■管理
■紹介
を重視する会社ほど、無理な価格設定は勧めません。
5.高く出して、下げればいい?その落とし穴
「とりあえず高く出して、反応を見て下げればいい」
よく聞く考え方ですが、注意点もあります。
● 最初の印象が一番重要
不動産は、売り出した最初の数週間が最も注目されます。
この時期に、
■高すぎて見向きもされない
■内見が入らない
そんな状態になると、「売れ残り物件」という印象がついてしまいます。
妥協すべきかどうかの判断基準
では、どこまで妥協するべきなのでしょうか。
判断の軸は、価格そのものよりも、
■どれくらいの期間で売りたいか
■売れないことによるリスクは何か
■住み替え・相続・資金計画への影響
です。
■時間に余裕がないなら
■住み替え期限がある
■ローンが重なっている
この場合は、市場に合った価格への修正は早めが結果的に得です。
6.情報弱者が後で苦労する理由
不動産売却で後悔する方の多くは、
■高い査定額だけで会社を選んだ
■都合の良い話だけを信じた
■現実的な説明を聞かなかった
という共通点があります。
結果として、
■何度も値下げ
■売却期間が長期化
■精神的にも疲弊
してしまうケースは少なくありません。
結果として、「いくらで売れるか」を一緒に考えてくれるかが重要
売却価格で妥協するかどうかは、単純な「高い・安い」の話ではありません。
大切なのは、
■なぜその価格なのか
■売れなかった場合の次の一手
■市場を踏まえた現実的な説明
を、きちんとしてくれる相手かどうかです。
高い価格を言ってくれる会社が、良い会社とは限りません。
売主にとって本当に必要なのは、「夢のある数字」ではなく、現実と向き合った戦略です。
その視点で、不動産会社や営業マンを選んでいただければと思います。
記:宅地建物取引士 原田