
Vol.275 「国土交通省のガイドラインに沿っていますか?」
「国土交通省のガイドラインに沿っていますか?」
― SNSで話題の“魔法の言葉”、本当に通用する? ―
最近、SNSや動画サイトでこんな内容を見かけませんか?
「賃貸退去時に『国土交通省のガイドラインに沿っていますか?』と言えば、請求が0円になります」
かなり断定的で、しかも気持ちよくスカッとする内容なので、
信じたくなる気持ちも分かります。
ただ、不動産業界の現場から言わせていただくと…
それ、魔法でも裏技でもありません。
1.そもそも国土交通省のガイドラインとは?
まず前提から整理します。
国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」は、
■借主負担
■貸主負担
を明確に分けるための考え方の指針です。
たとえば、
■通常使用による経年劣化 → 貸主負担
■故意・過失・善管注意義務違反 → 借主負担
という区分は、すでに業界では常識レベルです。
2.普通の不動産会社は、最初からガイドラインに沿っています
SNSで言われているような、
「その一言で0円」
「知らないと損」
「業者は騙している」
という前提自体が、かなり雑です。
真面目に賃貸管理をしている不動産会社は、
最初から
当たり前に
ガイドラインに沿って
原状回復費用を算出しています。
なので、
「ガイドラインに沿っていますか?」と聞かれても、
「はい、もちろんです。」で終わります。
3.それでも減額されるケースがある理由
では、なぜ「言ったら減額された」という人がいるのでしょうか。
理由はシンプルです。
①もともと説明不足・計算ミスだった
■担当者の知識不足
■説明が雑
■計算が甘い
こうしたケースでは、指摘されて修正されることはあります。
②管理がずさんな会社だった
残念ながら、
■ガイドラインを理解していない
■勉強していない
■慣例で請求している
会社が存在するのも事実です。
そういう相手には、ガイドラインを持ち出すことで、効果がある場合もあります。
4.でも、真面目な会社には「まったく効きません」
ここが一番大事なポイントです。
■法律
■ガイドライン
■判例
を常にアップデートしながら、日々仕事をしている会社にとっては、
SNSで話題のフレーズは、何の武器にもなりません。
なぜなら、それが基準だから。
人の命を守る医者に免許更新が無く、不動産会社には更新がある。
おっかしいですねぇ。
5.むしろ逆効果になることも
少し厳しい言い方になりますが、
■高圧的
■知ったかぶり
■最初から疑う姿勢
で交渉に入ると、
■丁寧な説明を受けにくくなる
■本来ある柔軟対応がなくなる
こともあります。
不動産も、結局は人と人の仕事です。
6.「0円にする手法」ではありません
ガイドラインは、「借主を守るための免罪符」・「すべてを0円にする魔法」ではありません。
本来の役割は、
■トラブルを防ぐ
■双方が納得するための指針
です。
請求がゼロになるかどうかは、
■使い方
■状況
■契約内容
によって変わります。
7.真に受けるより「エンタメ」として楽しむくらいが丁度いい
SNSのこうした情報は、
■分かりやすい
■気持ちいい
■拡散しやすい
その分、現実はかなり端折られています。
なので、「へぇ、そんな考え方もあるんだ」くらいの
エンタメ感覚で見るのが、一番健全です。
【本当に大事なのは、ココ】
退去時に大切なのは、
■契約書の内容
■入居期間
■使い方
■写真などの証拠
そして、話が通じる相手かどうかです。
SNSの言葉よりも、目の前の担当者との対話の方が、よほど重要です。
魔法の言葉より、冷静な確認を
「国土交通省のガイドラインに沿っていますか?」
この言葉自体は、間違っていません。
ただし、
■それで必ず0円になる
■言えば業者が折れる
という期待は、現実とはズレています。
真面目な不動産会社にとっては、当たり前すぎる話だからです。
正しい知識は、武器ではなく、理解のために使うもの。
それくらいの距離感で、付き合っていくのが一番損をしない方法です。
記:宅地建物取引士 原田