
Vol.296 20年住むとその物件がもらえる?
20年住むとその物件がもらえる?
~「時効取得」という法律の話と、不動産のリアル~
「ずっと住んでいる人が、
なんとも羨ましい話。
これは、実際にあるんです。
実は日本の法律には、長い期間その土地や建物を使い続けることで
これを「時効取得」といいます。
ただし、この制度は「ただ長く住めば家がもらえる」
特に重要なポイントは、賃貸で住んでいる場合は原則として時効取得にならないという点。
今回はこの「時効取得」の仕組みを、解説していきます。
1.時効取得とは何か
まず、時効取得の基本からお話しします。
取得時効とは、
一定期間、他人の土地や建物を自分のものとして占有していると、
これは日本の民法で認められている制度です。
期間は大きく分けて2つあります。
■10年
■20年
ただし、条件が違います。
【10年の時効】
■自分のものだと信じている
■過失がない
■平穏に占有している
【20年の時効】
■自分のものでは無いと分かっている
ここだけを見ると、「20年住めばもらえる」と思ってしまいますよね。
ですが、そう上手い話ではないんです。
2.最大のポイント「自分のものとして住んでいるか」
時効取得の最大のポイントは、「自分のものとして占有しているか?」という点です。
法律ではこれを所有の意思と呼びます。
つまり、「これは自分の土地だ」という前提で使っている必要があります。
ここで重要な疑問が出てきます。
「賃貸で住んでいる人はどうなるの?」
ということです。
3.賃貸住宅では時効取得は成立しない
結論から言うと、賃貸住宅では時効取得は成立しません。
なぜなら、賃貸契約は「これは大家さんの家です」という前提で借りているからです。
つまり、
■家賃を払っている
■契約書がある
■所有者が別にいる
という状態です。
この場合は、所有の意思がないと判断されます。
そのため、どれだけ長く住んでもその家が自分のものになることはありません。
50年住んでも、100年住んでも同じです。
4.実際に時効取得が起きるケース
では、どんな場合に時効取得が起きるのでしょうか。
実際の不動産の現場では、次のようなケースがあります。
【境界の勘違い】
例えば、隣の土地の一部を「自分の土地だと思って」長年使っていた場合です。
■塀を建てていた
■庭として使っていた
■駐車場にしていた
こうした場合、時効取得が成立する可能性があります。
【相続関係が複雑な土地】
昔の土地では、所有者が亡くなったり、いまだ相続が整理されていないというケースがあります。
そうした土地を長期間占有していると、時効取得が問題になることがあります。
5.実際の不動産取引ではどうなる?
不動産会社としては、時効取得の問題はかなり慎重に扱うテーマで
なぜなら、土地の所有権は不動産の最も重要な部分だからです。
境界が曖昧、長年使われている土地がある場合には、境界確認や測量、合意書などを作成することがあります。
こうした手続きをしっかり行うことで、
その上で、裁判所を通じて認めてもらう作業となりますから、
簡単に、ハイ、そうですか、とはならないのです。
また、「昔からの知り合いだからタダで貸してあげてる」なんてケースもちらほらり。
この制度を活用すると、もしかしたら取られてしまう場合もあるんです。
「逆に、いらないからあげるよ」なんて方もいます。
こうした背景で、「20年住めば家がもらえる」という話には、少しだけ本当の部分があります。
しかし、この制度が成立するためには一定の要件と法的手続きが不可欠。
都心部では考えにくいものの、地方では実際に手続きをする事で取得できる可能性が、相応にあるのも現実です。
もちろん、突然にそう言われたら、所有者としては困惑するでしょう。
ですが、こんな事案は、神奈川県内、しかも横浜市や川崎市ですら起こっています。
昔からの…って方は、書類も取り交わしていないでしょうしね。。。
あなたなら、どうしますか???
記:宅地建物取引士 原田