
Vol.165 山が欲しい!安いんでしょ???
山が欲しい!〜安いんでしょ???〜
オーナーになってわかる現実
最近じわり人気の「山」ブーム
「山を買いました!」
――そんな言葉、最近よく聞きませんか?
SNSやYouTubeでも、「マイ山でキャンプ」「自分だけの秘密基地」など、
“山を所有するロマン”を語る人が増えています。
確かに、都会の喧騒から離れて自然と過ごす時間は格別。
山林の価格も比較的安いため、「自分にも買えるかも」と思う人も多いでしょう。
しかし実際に買ってみると、
「思っていたのと違う…」
「管理が大変…」
「法律が複雑…」
と、現実とのギャップに驚く人も少なくありません。
今回はそんな「山を買う」という行為のリアルなメリット・デメリットを、
不動産の専門家の立場から、わかりやすくご紹介します。
まず、「山」ってどんな土地?
一口に“山”といっても、法律的には「山林」と呼ばれる土地です。
不動産登記上の「地目」が「山林」となっており、主に樹木が自然生育している土地を指します。
山林の主な用途は、
■キャンプやアウトドアの趣味スペース
■別荘やログハウス建設用地
■薪や木材の自家利用
■将来的な資産保有・自然保護目的
■企業による環境保全・CSR活動
つまり、“遊び場”としても“資産”としても、人によって価値の感じ方が大きく異なるのが山の特徴です。
【メリット①】とにかく安い!驚くべき「山の価格」
山の魅力のひとつは、圧倒的な安さです。都市部の住宅地では、数坪で数千万円なんて珍しくありません。
一方で、山林は数千坪で数十万円ということも。
たとえば地方の山間部では、
「1,000坪で100万円以下」、「所有者が手放したいから無料譲渡」
といったケースも見られます。
とはいえ、「安い=お得」とは限りません。
山は“買ったあとにかかる費用”が意外と多いのです。
それを理解していないと、“安物買いの大損”にもなりかねません。
【メリット②】自然の中での自由時間
山を買う最大の魅力は、やはり「自由」です。
誰に気兼ねすることなく、自分の山でキャンプ・焚き火・ハンモック・小屋づくり…。
「マイキャンプ場」という響きだけでもワクワクします。
また、他人の土地では禁止されがちな、「直火」「伐採」「整地」「小屋の建設」なども、
自分の土地なら基本的に自由(※後述の制限あり)です。
自然と触れ合いながら、都会では得られない時間を過ごせる。
これは何にも代えがたい体験です。
【メリット③】資産としての“ロマン”
「土地を持つ」という行為には、どこか“オーナーの誇り”があります。
山の所有はまさにその象徴。
都会で賃貸暮らしをしていても、「自分の山がある」と思うだけで、ちょっとした心の支えになります。
また、相続や贈与などで「次世代への贈り物」にもなります。
自分の子どもや孫に「この山はおじいちゃんの土地なんだよ」と伝えるのも、なんだか絵になりますよね。
【デメリット①】管理が大変すぎる!
山を持った人が最初に直面するのが、「管理の現実」です。
木は勝手に成長し、草は伸び放題。
放っておくと、倒木や崖崩れのリスクが出てきます。
山を持つと必要になること――
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■草刈り・間伐などの維持管理
■私道や林道の補修
■不法投棄の処理
■獣害・害虫対策
■災害発生時の責任
特に近年は、“放置山林問題”が社会問題化しています。
誰も管理しない山が増え、土砂災害や倒木事故の原因になることも。
つまり、「買って終わり」ではなく、「持ち続ける責任」が伴うのが山の所有なのです。
【デメリット②】固定資産税・登記・境界の手間
「山なら税金が安いでしょ?」
確かに住宅地よりは安いですが、ゼロではありません。
土地の評価額に応じて、固定資産税は毎年かかります。
ただし、ほとんどの山林は低評価なので年数千円〜数万円程度が多いです。
しかし、本当の問題は「境界が不明」なケース。
山林の境界は曖昧なことが多く、
「どこまでが自分の土地かわからない」
「隣の土地に重なっている」
といったトラブルが非常に多いです。
そのため、購入時には測量や境界確認が重要。
これを怠ると、のちのち売ることもできなくなるリスクがあります。
【デメリット③】建物を建てられない場合も多い
山を買って「小屋を建てたい」、「別荘を建てたい」と考える方も多いですが、
ここに大きな落とし穴があります。
山林の多くは「市街化調整区域」や「農林地」に指定されています。
これらの地域では、
・住宅や別荘の建築が原則できない
・建築確認が下りない
・電気・水道などインフラ整備が困難
といった制限があります。
つまり、自分の山でも建物を建てられないことが多いのです。
購入前には必ず自治体に確認を取りましょう。
「建てられる土地」と「建てられない土地」は、見た目ではわかりません。
【デメリット④】売れにくい・手放しにくい
山を手に入れるのは簡単ですが、手放すのは難しいのが現実です。
需要が少ないため、買い手がつきにくく、固定資産税や管理費用がかかり続けるため、
「売りたくても売れない」というケースが多発しています。
中には、
「相続したけど使い道がなく、維持費だけがかかる」
「処分したいけど買い手が見つからない」
という声も。
最近では“無償譲渡”や“山林バンク”といった仕組みもありますが、
それでも「引き取る人がいない」という問題が残ります。
【デメリット⑤】責任は“所有者”にある
たとえ人が入らなくても、山で起きたことの最終責任は所有者にあります。
たとえば―
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■倒木で隣地の建物を壊した
■崖崩れで道路を塞いだ
■不法投棄や不審火が発生した
こうした場合、「自分は使っていない」では済まされません。
所有者としての管理責任を問われる可能性があります。
山を持つということは、“ロマン”と同時に“責任”も背負うということなのです。
では、「買ってよかった」と言える人はどんな人?
ここまでデメリットも多く挙げましたが、もちろん上手に活用している人もたくさんいます。
山を買って成功している人の特徴としては、
■定期的に現地へ通える(管理できる)
■登記・測量・境界などの知識を理解している
■自分でDIY・整備を楽しめるタイプ
■“資産としての価値”より“体験”を重視している
■法的制限を理解してから購入している
要するに、「山を持つ=投資」ではなく、
「ライフスタイルの一部」として楽しむ覚悟がある人が成功しています。
【購入前に必ずチェックしたい5つのポイント】
-
地目と用途地域
→ 建物が建てられるかどうかの最重要ポイント。 -
接道状況
→ 道路に接していないと、車も入れず整備もできない。 -
水・電気などインフラの有無
→ 生活するつもりなら、水源と電力確保は必須。 -
境界・所有者の確認
→ 測量図・登記簿で自分の土地範囲を明確に。 -
災害リスク
→ 土砂災害警戒区域や地滑り危険地は避ける。
これらを不動産会社・専門家と一緒に確認すれば、“失敗しない山選び”ができます。
山を買うなら、「現実」と「ロマン」を両立させよう
山を買うことは、単なる土地取引ではなく、自然と共に生きる選択です。
確かに、
・安く買える
・自由に使える
・所有のロマンがある
という魅力があります。
しかし同時に、
・管理の手間
・法律の制約
・責任の重さ
といった現実もあります。
山を買う前に、まず相談を
「山を買ってみたいけど、どんな場所がいいのか分からない」
「キャンプや別荘用に使える山はある?」
「管理や法規制が心配…」
そんなときは、ぜひ不動産会社へご相談ください。
私たちは、
・建築や伐採が可能な土地か
・接道やインフラの状況
・安全で管理しやすい立地
などを総合的にチェックし、あなたの目的に合った“使える山”をご提案します。
“山を買う”という選択は、ちょっとしたロマンと、確かな知識が必要です。
その両方をバランスよく手に入れて、あなただけの「マイ山ライフ」を安心してスタートさせましょう。
記:ライフプランナー 武井