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Vol.168 不動産売却一括査定サイトの闇

不動産のアレコレ

不動産売却一括査定サイトの闇

― その「便利さ」の裏に潜むリスクと、本当に信頼できる相談先とは ―



「不動産を売りたいけど、まずはいくらで売れるか知りたい」


そんなとき、ネットで目にするのが「不動産一括査定サイト」です。


「最短60秒で複数社に査定依頼!」


「無料で高額査定を比較!」



便利そうに見えるこの仕組み。


しかし、実はその“裏側”には、多くの人が知らない落とし穴が潜んでいます。



今回は、不動産業界の現場を知る立場から、


一括査定サイトの仕組み・問題点・上手な付き合い方を徹底的に解説します。



これを読めば、あなたの大切な不動産を守るために「何を信じ、どう行動すべきか」が分かります。




1. 一括査定サイトとは?その仕組みを正しく理解しよう


まず、一括査定サイトの基本的な仕組みを整理しておきましょう。



1-1. 一括査定サイトは「不動産会社を紹介する広告サイト」

一括査定サイトとは、複数の不動産会社に一度に査定を依頼できる便利なサービスです。
ユーザーは物件情報と連絡先を入力するだけで、複数の会社から査定結果が届く――という仕組み。

しかし、実際にはこのサイト、不動産会社が広告費を払って登録しているだけなのです。
つまり、「査定してくれる会社を厳選して紹介している」わけではなく、“登録料を払っている会社が自動的に表示されている”という構造が大半です。

この登録料、一客〇〇円として支払っています。


1-2. 運営会社は不動産会社ではない

ほとんどの一括査定サイトは、不動産会社ではなく「IT広告会社」や「マーケティング会社」が運営しています。
彼らの目的は“ユーザー情報(見込み客情報)を不動産会社に提供して広告収入を得ること”。

つまり、一括査定サイトの本質は「見込み客の情報販売ビジネスなのです。




2. 一括査定サイトの「闇」その①


【個人情報が複数の業者に一斉送信される】



最も大きな問題のひとつが、あなたの個人情報が複数社に一気に送られることです。


サイトに入力した瞬間、あなたの情報(氏名・住所・電話番号・メールアドレス・物件情報など)は、


数社~最大10社以上の不動産会社に同時送信されます。



その結果――


電話が鳴り止まない

メールが大量に届く

営業訪問をされる

査定依頼をしただけなのに「売却の意思がある」と思われる


といったトラブルが頻発します。



2-1. 情報は“商品”として扱われる

一括査定サイトの運営会社は、1件あたり数千円〜1万円ほどで「査定依頼情報」を不動産会社に販売しています。
つまり、あなたの情報は“商品”なのです。
売却の意思がまだ固まっていない段階でも、「見込み客」として販売されてしまうのです。


逆に不動産会社からすれば、連絡が付かない見込み客に対しても費用が発生している状態。


あまりにも酷いと、当然怒ります。


訴訟問題に発展する。


もう、日常です。




3. 一括査定サイトの「闇」その②


【高額査定で気を引く“釣り査定”の実態】



次に多いトラブルが、不動産会社による「釣り査定」です。


複数の会社が競うように査定額を提示する仕組みの中で、


「とにかく他社より高く見せよう」と、実際の相場より高い金額を提示する会社が出てきます。



3-1. “高く査定する会社=信頼できる”ではない

当然ながら、査定額が高ければ売主は「この会社に任せたい」と思ってしまいます。
しかし、実際に売り出してみると――

■売れない

値下げを繰り返す

結果的に相場より安く売れてしまう

といったケースが後を絶ちません。


3-2. なぜそんなことが起こるのか?

不動産会社にとって、最初の目的は「媒介契約を取ること」です。
そのため、「他社より高い査定を出して契約を取ってしまえば、あとは時間をかけて値下げすればいい」と考える会社もあるのです。

これが、業界で問題視されている“高額査定商法”です。




4. 一括査定サイトの「闇」その③


【結局、地域に強い会社が出てこない】



一括査定サイトで紹介される会社は、その会社と契約した不動産会社のみ。


そのため、本当に地域に密着して信頼されている会社が参加していないケースも多いのです。



4-1. 登録制限とエリアの偏り

例えば、地方都市では「登録している不動産会社が2〜3社しかいない」ケースも珍しくありません。
その結果、地域の相場をよく知らない大手業者が机上査定だけで金額を出し、実際の売却価格とかけ離れた査定になることも。


4-2. 本当に頼るべきは“地域を知る専門家”

地元の相場、買い手層、過去の取引実績を熟知しているのは、地域密着型の不動産会社です。
そのような会社は、派手な広告ではなく、地道な口コミや実績で信頼を得ています。
一括査定サイトでは出会えない“本物の専門家”こそ、売却成功の鍵を握ります。




5. 一括査定サイトの「闇」その④


【査定額は「概算」でしかない】



一括査定サイトで提示される査定額の多くは、机上査定(概算)です。


つまり、実際に物件を見ず、過去のデータとエリア相場だけで計算されています。



5-1. 現地を見ない査定の危うさ

不動産の価値は、数字だけでは決まりません。
陽当たり・周辺環境・リフォーム状態・眺望・騒音など、現地を見なければ分からない要素が非常に多いのです。

机上査定だけで「あなたの家は〇〇万円です」と言われても、それはあくまで“推測値”
実際に売り出すと、まったく違う価格になることもあります。




6. 一括査定サイトを使うなら「ここに注意!」


もちろん、一括査定サイトそのものが「悪」ではありません。


仕組みを理解して、慎重に使えば、相場を知るための参考にはなります。


ただし、使う際は次のポイントを守りましょう。



6-1. 依頼する会社は“2〜3社”に絞る

登録できる最大数(5社や10社)を選ばず、信頼できそうな2〜3社だけに絞りましょう。
営業連絡を最小限に抑えられます。


6-2. 査定額ではなく“説明内容”を比較する

大切なのは「なぜその価格になったのか」という根拠の説明力です
丁寧に理由を説明してくれる会社は、信頼できるパートナーです。


6-3. 査定だけで終わらせる勇気を持つ

査定を受けても、すぐに契約を結ぶ必要はありません。
「他の会社にも聞いてみます」と伝えることで、冷静な判断ができます。




7. 不動産売却で後悔しないために、本当に大切なこと


売却を成功させる最大のポイントは、「誰に相談するか」です。


どんなに便利なサイトを使っても、最終的にあなたの家を売るのは「担当者」です。



7-1. 担当者の「姿勢」と「誠実さ」を見る

売主の利益を第一に考えてくれるか、リスクも正直に説明してくれるか。
こうした姿勢こそ、長く信頼できる不動産会社の証です。


7-2. 地域密着型の不動産会社が強い理由

地域の市場を深く理解している会社ほど、「実際に売れる価格」「売れるまでの期間」「買い手層の傾向」など、リアルな情報を持っています。
机上の数字ではなく、現場の経験に基づいた提案ができるのです。




8. 一括査定サイトの“便利さ”に惑わされないで


一括査定サイトは、たしかに便利です。


しかし、その便利さの裏には次のような“闇”が潜んでいます。


個人情報が複数社にばらまかれる

高額査定で釣られるリスクがある

地域に強い会社が含まれていない

概算査定で誤った判断をしてしまう



つまり、一括査定サイトは「情報収集の入口」には使えても、


信頼できる売却パートナー探し」には向いていないのです。



記:宅地建物取引士  原田

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