
Vol.427 結婚前の不動産購入。トラブル回避の秘訣を伝授。
未婚で不動産購入する人が増えている
近年、結婚前に不動産を購入する人が増えています。
特に、独身女性や、パートナーとの関係は深いが法律婚していないカップルなど、多様なライフスタイルが生まれています。
しかし、未婚での購入には、結婚後に予想外のトラブルが発生する可能性があります。
<未婚購入の最大のリスク:「配偶者控除」と「相続」>
【税務上の問題】
既婚者なら、配偶者に対して「配偶者控除」や「配偶者の扶養控除」が適用される場合があります。
しかし、未婚で購入した場合、その後結婚しても、その物件に関する税務申告はあくまで「個人名義」のままです。
つまり、離婚した場合、その物件をどう分割するかが問題になります。
【相続のトラブル】
独身で購入した場合、相続が発生した時、その物件は「直系親族(親・兄弟)」に相続されます。
もし、同居していたパートナーがいても、法律上の「相続人」ではないため、その物件に住み続けることができなくなる可能性があります。
<結婚前購入でよくあるトラブル事例>
ケース①:独身時代に購入→結婚→離婚→物件の分割問題
当社の相談事例です。Aさん(女性、当時30歳)は、独身時代に2,000万円の自己資金で不動産を購入しました。
その後、結婚して子どもも2人。しかし、結婚5年目に離婚することになりました。
法律上、「婚前資産」(結婚前に購入・所有していた資産)は、原則として離婚時の財産分割の対象外です。
しかし、結婚中に「住宅ローン返済」や「リフォーム代」を夫婦で負担していた場合、その部分に関しては「夫の貢献」が認められ、分割対象になる可能性があります。
Aさんの場合、結婚中にローン返済に夫が500万円ほど協力していたため、その部分について「財産分割」が発生し、結果的に500万円の支払いが必要になりました。
ケース②:同居パートナーが亡くなった→相続権なし
Bさん(女性)は、パートナーと15年間同居していましたが、法律婚をしていませんでした。パートナー名義の2,500万円の物件に住んでいました。
パートナーが急死したとき、「相続人は両親と妹」と判定され、Bさんは住み続ける法的権利を失い、6ヶ月で退去を求められました。
<未婚購入を避けられない場合のリスク回避策>
1. 共有名義にする(法律婚していないカップルの場合)
二人で資金を出し合っている場合、「共有名義」にすることで、各自の持分を明確にできます。
例えば、Aさんが1,500万円、Bさんが500万円を出資したなら、Aさんが60%、Bさんが40%の共有者として登記します。
ただし、共有名義にする場合、以下の点に注意が必要です。
- 売却時に全員の同意が必要(片方が売却を望んでも、もう片方が反対すれば売却できない)
- ローン審査が厳しくなる可能性(二人の信用が審査対象になるため)
- 相続時に持分が相続される(Aさんが亡くなると、Aさんの持分60%は、Aさんの親や兄弟に相続される)
2. 遺言書を作成する(独身者の場合)
独身で購入した場合、万が一のことがあったとき、その物件が「自分が望む人」に行くように、遺言書を作成します。
例えば、同居しているパートナーに物件を譲りたい場合、遺言書に「全財産をパートナーに譲る」と記載します。
ただし、相続人(親や兄弟)に「遺留分」(一定の相続人が受け取る権利)がある場合、完全には実現されない可能性があります。
3. 婚前契約書(Pre-nuptial Agreement)の作成
結婚前に、「この物件は私の婚前資産であり、離婚時には分割対象外とする」という契約書を作成します。
これにより、離婚時のトラブルを事前に防ぐことができます。
4. 親族信託を設定する
自分が亡くなった後、その物件を「信頼できる親族」に管理・処分してもらうための制度です。
例えば、自分が亡くなった後、同居のパートナーが物件に住み続け、パートナーが亡くなった後は親に返却する、といった複雑な相続構造を実現できます。
<未婚購入でも大丈夫な人、危ない人>
大丈夫な人
- 親からの援助で自己資金が充実している
- 配偶者予定者がいない(ずっと独身でいる予定)
- 親が元気で、相続の心配がない
- 投資用物件として購入している
危ない人
- パートナーがいる(婚約者含む)
- 近い将来、結婚予定がある
- 親が高齢で、相続が近い
- ローン返済を親やパートナーに手伝ってもらう予定
<現在のパートナーとの関係を整理する質問>
- 今後3年以内に結婚予定はあるか?
- 一緒に返済を手伝ってくれるか?
- 一緒に住む予定があるか?
- 将来、この物件に子どもと一緒に住む予定があるか?
これらの質問に「はい」が1つ以上あれば、未婚での単独購入は避けるべきです。
ー結婚予定がある場合の対策ー
結婚予定があるなら、結婚してから購入する方が圧倒的に有利です。
婚約時でも進められますが、引渡後、〇〇日以内に証明書(住民票等)の提出を求められる可能性があります。
- 配偶者控除が適用される(税務上の優遇)
- 夫婦で連帯ローンを組める(借入額が増える可能性)
- 離婚時も「婚姻中の資産」として明確に分割できる
- 相続時の税務処理がシンプルになる
少し先延ばしにしても、結婚してから購入する方が、長期的には安心です。
ー未婚でも安心して購入する最後の手段:弁護士への相談ー
以上の対策でも不安な場合は、弁護士に相談することをお勧めします。
弁護士なら、ご自身の具体的な状況に応じて、最適な相続対策や契約書の作成を支援してくれます。
相談料は通常5,000~10,000円程度です。
【結論:「結婚前だから」ではなく「人生設計に合わせて」判断を】
未婚での購入が必ず危険とは言いませんが、将来のライフプランに大きな変化がある可能性があります。
配偶者、子ども、相続など、人生には予想外の転機があります。その時に「あの時、こうしておけば」と後悔しないために、購入前に親族・配偶者・弁護士に相談することが重要です。
津田商会では、単なる物件紹介だけでなく、人生全体を視野に入れた購入相談を行っています。
未婚での購入を検討されている方も、ご遠慮なくご相談ください。
多様性を求められる時代だからこそ、私たちも多様に。
記:ファイナンシャルプランナー 菊池