Vol.78 土地の“評価額”と“実勢価格”ってなにが違うの?
土地の“評価額”と“実勢価格”ってなにが違うの?
~「ウチの土地、いくら?」の答えは1つじゃない!?~
実は、土地の価格って、ひとつじゃないんです。
「固定資産税の通知で見たうちの土地、〇〇万円だって!」
「相続の評価ではこの土地1,200万円だったのに、不動産屋は2,500万円って言ってきたんですけど!?」
「ネットに載ってた売地は、同じエリアで3,000万…。いったい何が本当なの?」
──そう、土地の価格って一言で言えないんです。
実は「土地には価格がいくつもある」というのが、正しい答え。
え? 一つの土地に値段が複数ある?
なんかもう、いきなり怪しい不動産ワールドに突入してません?
でも大丈夫。
この記事では、「評価額」と「実勢価格」の違いを中心に、土地の“価格の正体”をわかりやすく解説していきます。
土地の価格は“目的”によって変わる!
土地の価格が複数ある理由、それは、、、
「使う目的によって価格が違うから」
です。
たとえば…
-
・税金を計算するための価格(←安め)
-
・相続での評価額(←少し高め)
-
・実際に売買される価格(←市場によりけり)
つまり、「どのシーンで使う価格か?」によって、まったく別の値がつくというわけ。
これはもう、土地の“顔”が場面ごとに変わる役者みたいなもの。
それぞれの“配役”を見ていきましょう。
土地価格の4兄弟を紹介します
① 公示地価(こうじちか)
→ 国が年1回発表する、全国の標準地の価格。
一種の「お手本価格」みたいなもので、実勢価格に最も近い“指標”的存在。
② 路線価(ろせんか)
→ 主に相続税や贈与税を計算するための価格。
国税庁が道路ごとに「この道路沿いは1㎡いくらね」と決めています。
①公示地価の8割くらいが目安。
③ 固定資産税評価額
→ 市区町村が毎年の固定資産税を計算するために出す評価額。
①公示地価の7割前後が一般的。
④ 実勢価格(じっせいかかく)
→ 実際に市場で売り買いされている価格。つまりリアルに売れる価格。
不動産屋さんが「このくらいで売れる」と言ってくるのがコレ。
「評価額」=税金のための“数字上の価値”
さて、まず混乱を避けるために定義を確認しましょう。
【評価額】=国や自治体が“税金を計算するために”決めた価格
たとえば、
-
・固定資産税
-
・都市計画税
-
・相続税
-
・贈与税
などは、評価額に基づいて課税されます。
つまりこの価格、売買するための価格ではないというのがポイント。
「固定資産税評価額が800万円だから、800万円で売れるはず!」というのは誤解です。
実際には、その価格では売れないことも、逆にもっと高く売れることも。
「実勢価格」=市場で売れる“生きた価格”
一方の実勢価格とは、
【実勢価格】=実際に売買されたときのリアルな価格
つまり、「いくらで売れるか」という最も“現実的な価格”。
これは周辺の取引事例・人気度・地形・道路状況・上下水・接道義務など、さまざまな要素がからみます。
例えるなら、
-
評価額=履歴書に書いてある「偏差値」
-
実勢価格=模試や実際のテストで出た「得点」
のような関係。
“紙の上の価格”と“実際に市場で通用する価格”は違って当然なんです。
よくある誤解「評価額より高く売ったら怒られるの?」
結論:怒られません。むしろ正解です。
たとえば…
-
固定資産税評価額:1,000万円
-
実際に売れた価格:2,200万円
こんなこと、よくあります。
なぜなら評価額は「税金計算のために抑えめに見積もる」のが前提だから。
むしろこの差がないと、税金ばかり高くなってしまいます。
では、「評価額」が高い土地=良い土地?
そうとも限りません。
なぜなら、評価額は「過去のデータ」に基づいていたり、「地域平均」で決まっていたりするから。
たとえば…
-
南向きの整形地でも
-
北向きの変形地でも
→ 評価額はほぼ同じになることも。
また、評価額の改定は3年ごと・毎年とタイムラグがあるため、市場の動きについていけてないことも多いのです。
売却を検討するなら、評価額より実勢価格を重視!
じゃあ結局、土地を売るときに見るべきなのは?
そう、実勢価格です。
プロの不動産会社は、以下のような情報を基に「実勢価格」を算出します。
✅ 近隣の成約事例(レインズなど業者間システムを使用)
✅ 土地の形状・接道状況・高低差
✅ 法律上の制限(用途地域・建ぺい率・容積率など)
✅ 上下水・ガスの整備状況
✅ 地盤・ハザードマップ
✅ 周辺施設(駅・学校・スーパーなど)
つまり、総合的な判断によって“リアルな価格”を見出すのが実勢価格なんです。
なぜ不動産屋の査定と評価額はこんなに違うの?
よくある質問です。
評価額が1,000万円だったのに、不動産屋が「2,300万円でいけます!」とか言ってきたら、
「本当にそんなに高く売れるの?」
「逆に騙されてない!?」
と、疑いたくもなります。
でもこれは、前述のようにそもそも目的が違う価格だから。
-
評価額:税務署・市役所の“お役所目線”
-
実勢価格:市場や買主の“リアル目線”
あなたが土地を売るとき、どっちの目線を優先すべきかは…言うまでもありませんよね?
相続時などでは“評価額”が重要になる
ただし、例外があります。
たとえば、親から土地を相続したとき。
このとき重要なのは「相続税の評価額(路線価ベース)」です。
この評価額が高いと、相続税がかかるし、
低ければ課税されない or 減額されます。
「相続時に評価額で税金を払ったのに、あとからもっと高く売れてラッキー!」
ということもあります。
でも逆に、
「評価額より安くしか売れず、税金を払った分だけ損した…」
なんてパターンもあるので注意が必要です。
まとめ:評価額と実勢価格の違い、押さえるべきはココ!
比較項目 | 評価額 | 実勢価格 |
---|---|---|
主な目的 | 税金計算(固定資産税・相続税など) | 売買の実取引に使う |
決めるのは? | 国・自治体 | 市場(買い手・売り手) |
タイムラグ | あり(更新に数年) | リアルタイム |
金額傾向 | 安め | 需給に応じて高くも安くも |
使い方 | 相続・課税時など | 売却・購入の判断基準 |
土地の“本当の価値”はプロと一緒に見つけよう
「評価額より高く売れるのは当たり前」
「実勢価格こそが、“そのとき、その場所で”売れる価値」
そう言ってしまうと簡単ですが、この実勢価格は素人には見極めが難しいもの。
逆に言えば、信頼できる不動産会社と一緒に査定すれば、
「えっ、そんなに高く売れるの!?」
なんてサプライズもあるかもしれません。
まずは、あなたの土地が持っている“顔”を見極めてみませんか?
評価額では見えない魅力、きっとありますよ!
記:ファイナンシャルプランナー 菊池