Vol.79 “農地”のままでは売れない!地目変更のタイミングとは
“農地”のままでは売れない!地目変更のタイミングとは
~その畑、宅地に変えないと「売れません」~
えっ!? 畑だから売れないの!?
ある日、親から相続した郊外の立派な畑。
「都会で農業?いや、ムリムリ」なんて思いながら、不動産会社に「売ってください」と持ち込んだら…。
不動産屋:「あ〜、これ農地ですから、そのままじゃ売れませんね〜」
あなた:「へ? だって土地には変わりないでしょ?」
不動産屋:「宅地と農地は、全然別モノなんですよ」
──そう。農地は、勝手に売れません。
なぜかって?
それは、「農地法」という“ちょっとお堅い法律”がガッチリ土地を守っているからなんです。
この記事では、不動産のプロが教える「農地のままでは売れない理由」と、
いつ・どうやって地目変更すればいいか?
を解説します
「農地」と「宅地」は、そもそもルールが違う!
まず基本知識として、
「農地と宅地は同じ“土地”でも別ジャンル」
ということを押さえてください。
▼ 土地の地目(ちもく)って?
土地には、法務局で定められた“地目”というジャンルがあります。
ざっくり言うと、土地の「職業」みたいなもの。
地目 | 役割 |
---|---|
宅地 | 家が建つ用の土地 |
田・畑(農地) | 農業に使う土地 |
山林 | 山や森(建物×) |
雑種地 | いろいろ使える土地(駐車場など) |
このうち、「田」「畑」といった“農地”は、農地法によって特別な保護を受けている存在なんです。
なぜ農地は簡単に売れないの?
理由は一言。
日本の食料供給を守るため!
農地は国にとって「食糧生産の基盤」。
だから、誰にでもポンポン売ったり、好きに潰して家を建てられたりしてしまうと、
「全国の農地が住宅地になって、野菜が高騰!」
「日本の農業が崩壊…!」
──そんな事態になりかねません。
そのため、「農地を売る」・「用途を変える」には、市町村の農業委員会の許可が必要なんです。
よくある誤解:「買いたい人がいれば、売っていいんでしょ?」
残念ながらNOです。
たとえ買いたい人がいても、それが「非農家(=一般人)」だった場合、農地法の許可が出ません。
✅ 売却先が農家 → OK(農業目的で使用するなら)
✅ 売却先が非農家 → NG(転用目的と見なされる)
しかも、「名義変更だけ先にやっちゃおう」という裏ワザも通じません。
なぜなら、農地法では売買契約自体が“許可制”だから!
無許可でやると契約自体が「無効」になります。
(つまり、後でトラブルになった時、買主は「カネ返せ!」と言ってきても、契約が無効だとどうにもならない…)
地目変更って何?いつやるの?
さて、ではこの“売れない農地”を「売れる土地」にするにはどうするか。
答えは、
地目を農地から宅地に変更すること!
これを「地目変更(ちもくへんこう)」といいます。
▼ 地目変更の手順は?
-
農地転用の許可申請(農業委員会に申請)
-
造成工事(場合によって)
-
登記上の地目変更手続き(法務局にて)
この中で最も大事なのが【①農地転用の許可】。
実は、登記の「地目」を変えるためには、まず農地法の許可が“前提条件”なんです。
農地転用の種類と違いを知っておこう!
農地転用には、以下の2種類があります。
● 3条転用:農地として利用を前提に「農家に売る」場合
→ 売主も買主も農業者。農業目的ならOK。
● 5条転用:農地を農業以外の目的に転用(売却・宅地化)する場合
→ 「家を建てたい」「駐車場にしたい」など。
→ このパターンが不動産売却でよくあるパターン!
さらに注意すべきは、エリアによって転用許可の出やすさが違うという点。
区分 | 内容 | 転用しやすさ |
---|---|---|
市街化区域 | 都市化が進んだエリア | 許可不要(届出のみでOK) |
市街化調整区域 | 原則として開発× | 許可が非常に厳しい |
特に“市街化調整区域”にある農地は、「転用させません」前提で動いている自治体も多く、売却も難航します。
地目変更は“いつやるか”がキモ!
ここで本題です。
地目変更って、いつやればいいの?
ポイントは2つのパターンです。
✅ パターン①:売る前に地目変更しておく
これは、
「買主が農地を買うことに不安を感じている」
「農業委員会の許可を事前に取っておきたい」
など、スムーズに売るための布石。
メリット
-
・買主が安心して購入できる
-
・売買契約後のトラブルが減る
デメリット
-
・転用許可が下りるまでに時間がかかる(1〜3ヶ月)
-
・造成費用などが発生する可能性も
売主としては「農地のまま売る」ので手間は少ない。
契約時に「転用許可が下りなければ白紙解除」といった条件を付けておく。
メリット
-
・売主が手間をかけずに済む
-
・実需をもつ買主が転用するなら許可も下りやすい
デメリット
-
・買主側に“転用のハードル”を課すため、敬遠されやすい
-
・売却に時間がかかる可能性
❌「地目変更すれば簡単でしょ?」と甘く見る
→ 転用許可が下りるには、用途・エリア・面積・接道など条件が細かく設定されている。
❌「相続した土地だからすぐ売ろう」→ 実は農地
→ 相続登記して終わりじゃない!“農地”というだけでハードルが数段上がる。
❌「昔から宅地として使ってたから」→ 登記上は農地のまま
→ 実態と登記が食い違っているケースも多い。地目の登記変更を忘れずに!
実際に農地を売るときの5つのステップ
-
地目が「田・畑などの農地」であることを確認(登記簿謄本 or 固定資産税通知書)
-
市町村の農業委員会に相談(転用許可が下りるか)
-
買主を探す or 不動産会社に相談
-
許可後、造成・整地など必要に応じて整備
-
法務局で地目変更の登記を申請
この一連の流れを知らないと、
「売れると思ってた土地が全然売れない…」
という“塩漬け農地”になってしまいます。
「農地は“売る前準備”が命!」
農地を“活かすか・売るか”は、戦略次第
農地は売れない──確かに一理あります。
でも正確に言えば「売れるようにすれば、売れる」のです。
地目を変えるには、ちょっと面倒で時間もかかります。
でも、そこをきちんと踏めば、売れなかった土地が“高値で売れる宝”に変わるかもしれません。
また、自治体によって独自のルールが設けられている場合もあります。
特に離島はこうした制度が設けられており、上記に記載した他、
・道路(農道)
・ライフライン
・近隣の学校までの距離
など、複雑化されているケースもよく見受けられます。
更に、そのエリアで活躍する行政書士を捕まえておくことも、何気に重要だったりします。
「この畑、どうにかしたい…」と思ったら、まずはご相談ください。
あなたの土地、まだ“変身”できるかも?です。
記:宅地建物取引士 原田