
Vol.107 不動産査定額と現実の価格が違う理由
不動産査定額と現実の価格が違う理由
〜“夢の価格”と“現実の価格”のギャップにご注意を〜
不動産査定ってそもそもなに?
家を売ろうと思ったら、まずやること。それは「査定をしてもらう」ことですね。
では、この「査定額」とは何か?
簡単に言えば、不動産会社が「この価格で売れるかも」と予測した金額です。
車の下取りのようにある程度相場はありますが、
建物の状態、周辺環境、市場動向などさまざまな要素で大きく前後します。
ただし、ここに大きな落とし穴があるのです。
査定額=売れる価格、ではない!
はい、ここ大事です。査定額は「売れる価格」ではありません。
これは“会社側の見立て”です。
たとえるならば、結婚相談所の
「年収1,000万円で高身長で性格もいい相手があなたの希望ですか?じゃあご紹介しますね!」
的な話に近いかもしれません。
いざ会ってみたら…「え、なんか思ってたんと違う」なんてことも。
不動産の査定も同じ。
高めに提示されても、それは“期待を込めた価格”や“他社に勝つための数字”である場合があるんです。
査定価格が高くなる「裏事情」
不動産会社にとって、売却依頼を受ける=ビジネスチャンスです。
そのため、「媒介契約(ばいかいけいやく)」を結んでもらうことが最優先課題。
そこで登場するのが、“ちょっと高めの査定”というエサ。
実際には…
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A社「このエリアだと2,800万円ですね」
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B社「うちは3,200万円でイケると思います!」
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C社「ウチは3,300万円でチャレンジしませんか?」
──となったら、人間心理として「高く評価してくれたC社」にお願いしたくなりますよね。
でもそれ、本当に売れる価格でしょうか?
媒介契約を取るノルマがある
どう思いますか???
結局、売却価格はどう決まるのか
ズバリ言いましょう。不動産の売却価格は、市場(買主)が決めます。
いくら不動産会社が高く査定しても、買う人が現れなければ、値下げは避けられません。
つまり、「3,300万円で売れるかも!」と出しても、3か月売れなければ…
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3,180万円に値下げ
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さらに2,980万円に…
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最終的に2,800万円台で成約
なんてパターンは実際に多いです。
しかも、「最初の価格設定が高すぎると売れ残り感が出て、逆に安くしか売れなくなる」という
“負の連鎖”もあるんです。
実際に、この売主はこう言いました。
「最初から正直に3,000万円前後と言ってくれた会社に頼めばよかった…」
そう、高い査定に飛びつくと、かえって遠回りになってしまうことが多いのです。
高い査定をもらったとき、どうすれば?
査定額が高くて喜ぶ気持ちはわかります!
でも、そこはグッと冷静に。
以下のようなチェックが大切です。
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■査定の根拠が明確か?(近隣事例や需給バランス)
■「3か月以内に売れる価格」と説明しているか?
■他社の査定と大きく乖離していないか?
■高額提示だけでなく、販売戦略も話してくれるか?
実は、不動産会社にとっても「最初から適正価格で売れるほうが早く手間がかからず、利益も出やすい」んです。
本音で言えば…「査定はアテにしすぎない」が正解
査定額はあくまで“参考価格”です。
ちょっと大げさに言えば、「不動産の夢を見るための目安」くらいに考えた方がいいでしょう。
本気で売るなら、
■周辺の売出事例
■実際の成約価格
■時間をかけるか、早く売るかの優先順位
など、総合的に判断すべきです。
そして何より、誠実に「現実的な価格」を教えてくれる不動産会社が、あなたの味方です。
売却は冷静さと現実感がカギ!
今回のポイントをまとめます。
■査定額は“売れる価格”ではない
■不動産会社の「媒介契約ほしさ」による“高め査定”に注意
■高い査定に飛びつくと、結局値下げの繰り返しに
■市場が価格を決める!買う人が現れる価格が“本当の価値”
■査定額より「売る時期」「戦略」「相場とのバランス」が大切
「高く売りたい気持ち」も、「売れる価格とのギャップ」も、全部含めて不動産売却は“人間ドラマ”。
でも、冷静に現実を見つめる目を持てば、納得のいく売却に必ずたどり着けます!
記:宅地建物取引士 原田