
Vol.154 不動産会社が言う「地元に強い」とは、何が強い?
不動産会社が言う「地元に強い」とは、何が強い?
不動産会社の広告や営業トークで、よく耳にするフレーズがあります。
それが―― 「うちは地元に強いんです!」 です。
なんとなく頼もしい響きがありますし、地元密着型の会社なら安心できそうな気もしますよね。
でも、ここで少し冷静になって考えてみましょう。
「地元に強い」とは、具体的に何に強いのでしょうか?
そして、本当にその強さがあなたの不動産購入に役立つのでしょうか?
実は「地元に強い」という言葉、便利なキャッチコピーではあるのですが、実態は会社によってバラバラ。
看板のように掲げてはいるけれど、
中身をよく見てみると「それって普通じゃない?」というケースも少なくありません。
今回は、そんな“地元に強い”の正体を紐解きながら、
不動産購入検討者がこの言葉をどう捉えるべきか、解説していきます。
1.「地元に強い」は大きく3つに分かれる
不動産会社が「地元に強い」と言うとき、実際には以下の3つの意味に分けられます。
物件情報に強い
人脈やネットワークに強い
地域事情や生活環境に強い
それぞれ具体的に見ていきましょう。
(1)物件情報に強い
「地元に強い」の最も分かりやすい意味は、地元の物件情報を多く持っているということです。
・地主さんから直接売却相談を受けている
・まだネットに公開されていない“水面下物件”を知っている
・エリア内で売却・仲介実績が豊富で、売主と関係が深い
こうしたケースでは、他社には出回っていない情報に触れられるチャンスがあるのも事実です。
特に人気エリアでは、インターネットに出る前に売れてしまう物件もあるので、
「情報の鮮度」は地元の不動産会社ならではの強みといえるでしょう。
ただし、注意点もあります。
「情報に強い=必ずしもお得」ではありません。
地元で有名な会社ほど、売主からの信頼も厚く、売却を有利に進めたい“売主寄り”の立場になることも。
買主目線ではなく「売りやすい物件」を勧められることもあるので、冷静な判断は欠かせません。
(2)人脈やネットワークに強い
「地元に強い」と胸を張る会社の中には、地域の人脈が広いという意味で使っている場合もあります。
・地元の地主や建築業者、司法書士、金融機関とのつながりがある
・自治会や商工会、地元企業との関係が深い
・長年の営業で築いた信頼関係がある
こうしたネットワークは、購入後の生活にも役立つ可能性があります。
たとえば、リフォーム業者を紹介してくれたり、地元金融機関の住宅ローンに強かったり。
ただしこちらも要注意。
「顔が広い」ことと「購入者に有利かどうか」は別問題です。
人脈がある分、逆に業者同士で価格をコントロールしているケースもゼロではありません。
(3)地域事情や生活環境に強い
最後は、地域に関する知識が豊富という意味での「地元に強い」です。
・過去の災害履歴や地盤の強さを知っている
・学区や通学路の実際の様子を知っている
・夜間や休日の治安、騒音など、表に出ない情報を持っている
これは実際に暮らすうえで大きなメリットです。
インターネットではわからない情報を得られる可能性があるので、購入者にとっては非常に頼りになります。
ただし、これも会社によってバラつきがあります。
「地元」と言っていても、実際に細かい情報を持つのはベテラン営業マンだけだったり、
担当者が新入社員で「地元事情に詳しくない」ということも普通にあります。
2.「地元に強い」が看板だけのケースもある
ここまで見てきたように、「地元に強い」にはいくつかの意味がありますが、
中には単なる宣伝文句という場合も少なくありません。
例えば、
・ただ長く営業しているだけ
・駅前に店舗があるから「地元に強い」と言っている
・実際にはネットに出ている情報しか持っていない
こうしたケースは珍しくありません。結局、他社と変わらない情報しかないのに、
「地元に強い」とアピールしているだけ、ということですね。
3.「地元に強い」を見極める質問集
では、あなたが不動産会社に相談するときに、「本当に地元に強いのか」を見抜くにはどうしたらいいでしょうか?
以下の質問をぶつけてみるのがおすすめです。
最近、このエリアでどんな物件の取引をしましたか?
(実績を聞くことで情報力を確認)
この辺りで水害や地震の被害はありましたか?
(地域事情に精通しているかを確認)
ネットに出る前の物件情報は扱っていますか?
(情報の鮮度を確認)
地元の銀行や工務店との関係はありますか?
(人脈やネットワークを確認)
このように、具体的な質問をして答えが曖昧なら、実際には「強くない」と判断できます。
4.購入検討者が取るべきスタンス
「地元に強い」という言葉を鵜呑みにする必要はありません。
大事なのは、その会社が自分の購入目的に合っているかどうかです。
・未公開物件を狙うなら「物件情報に強い」会社
・購入後のリフォームや生活基盤も気になるなら「人脈に強い」会社
・安心して住みたいなら「地域事情に強い」会社
このように、自分が何を求めているかで「強さ」の意味を見極めましょう。
不動産会社が使う「地元に強い」という言葉。
確かに魅力的に聞こえますが、その中身は会社によってまちまちで、時には看板だけのこともあります。
重要なのは、「地元に強い=無条件に安心」ではないということ。
あなた自身が求める情報やサービスに対して、
本当にその会社が力を持っているかを確かめることが何より大切です。
「強さ」の実態を見極める目を持てば、不動産会社選びの失敗はぐっと減ります。
次に不動産会社のチラシや営業トークで「うちは地元に強いんです!」と聞いたときは、
ぜひ「何に強いんですか?」と一歩踏み込んでみてください。
その答えが、あなたの不動産購入をより良いものにするヒントになるはずです。
とは、まぁ、いろいろと言ってきましたが、
地元に強い!が、アピールとしてお客様が受け入れてくれるか否かは、
別問題なんですけどね。
記:宅地建物取引士 原田