
Vol.84 リフォーム頑張ったのに…なんで査定に反映されないの!?
リフォーム頑張ったのに…なんで査定に反映されないの!?
~売主の「熱意」と査定の「現実」の間にある深い溝~
「うち、めちゃくちゃ手入れしてるんです!」という売主あるある
売却を考えているマイホームの相談で、よくあるこのセリフ。
「この家ね、リビングの床、無垢材に変えたの」
「キッチン、数年前に200万円かけてリフォームしたのよ!」
「浴室乾燥機も最新のに交換済みでね…これは査定プラスでしょ?」
──はい、気持ちはとてもよくわかります。
家を大切に育ててきた歴史、投資してきたお金、こだわってきた間取り、色、素材……。
「この良さを分かってくれる人に売りたい!」
「当然、高く評価されるよね?」
──でも、現実はこうです。
査定額には、なかなか反映されにくいんです。
ガーンッ!!!!
なぜリフォームしても高く評価されにくいのか?
それには、冷静かつ現実的な理由があるんです。
▼ 理由①:買主は“感情”より“現況”を見る
買主側は、あくまで「いまの家の状態」で評価します。
売主の「昔ここに○○万円かけた」は、
正直、買主にとってはどうでもよい話だったりします(ごめんなさい…!)。
「いま、このキッチンが自分にとって使いやすいか?」
「床材が高級かどうかより、傷んでいないか?」
つまり、
“過去の努力”より“今の印象”が査定に直結するのです。
▼ 理由②:リフォームが“趣味”に近い場合も…
たとえば、こんなケース。
-
南欧風のアイランドキッチン(でも料理しにくい)
-
吹き抜けの開放感!(でも冷暖房が効きにくい)
-
大理石の床!(でも滑って危ない)
売主:「ここに300万円かけたのよ!」
買主:「え…それ、撤去したいかも…」
つまり、高額リフォームが逆に“マイナス査定”にすらなることも。
▼ 理由③:査定は“市場相場との比較”で決まる
不動産の査定とは、「周囲の同条件の物件と比較して、いくらで売れそうか」という予測です。
つまり…
-
近所の築20年・80㎡・マンション → 3,000万円で売れている
-
あなたの物件も築20年・80㎡ → だいたい3,000万円になる
このように、「過去にいくらかけたか」ではなく、相場の数字で決まるのです。
売主の心情:なぜ納得しづらいのか?
ここで、売主さんのモヤモヤを整理してみましょう。
☑ 自分で選び、時間とお金をかけたから愛着がある
当然です。長年住んでいれば、家は“モノ”ではなく“思い出の詰まった存在”。
自分の手でDIYした棚
家族団らんを支えてきたダイニング
子どもが最初にお風呂に入ったバスルーム
──そんな思い出に価格がつかないことが、寂しいのです。
☑ リフォーム代を「投資」として回収したい気持ち
売主:「あのリフォーム費用、300万円。10年住んだから…残価で150万円ぐらいはプラスになるよね?」
実際には、
「リフォームの費用=売却価格に直結」はほぼあり得ません。
むしろ、リフォームして10年も経てば「使用感あり」とみなされるため、
査定上は“経年劣化込み”の価格になることも…。
「じゃあ、リフォームって損なの?」という疑問に答えます
ここまで読むと、「え、じゃあリフォームって意味ないの!?」と思うかもしれませんが、そうではありません!
▼ 実は、査定ではなく“売れやすさ”に貢献する!
「フルリフォーム済」とあると、買主の印象は確実に良くなります。
特に以下のようなポイントは人気
-
・キッチンや浴室の設備が新しい
-
・クロスや床がきれい
-
・外観や共用部が手入れされている
つまり、
売却価格は上がらなくても、“すぐ売れる物件”になりやすい!
▼ 「よく手入れされていた」と印象を与える
「この家、大事にされてたんだなぁ」と思わせることができれば、買主の“安心感”がぐっと増します。
これが決断の後押しになるのです。
▼ 特定の層には刺さるリフォームもある
たとえば、
-
・バリアフリー化
-
・ペット対応床材
-
・収納強化型間取り
など、需要がハマる買主にとっては“価値あるリフォーム”に映ります。
売却に向けて心がけたい“現実的なマインドセット”
最後に、売主として後悔しないための心構えをお伝えします。
① 「思い出は思い出、価格は価格」と分けて考える
売主にとっては“かけがえのない家”でも、市場では“多数ある物件のひとつ”という見られ方をします。
そこにギャップがあると、落胆や怒りにつながりやすい。
気持ちと金額は、いったん分離して冷静に整理しましょう。
② 査定は複数社で比べてみる
1社だけの査定で「思ったより安い!」とショックを受ける前に、必ず3〜5社程度の相見積もりを取ることをおすすめします。
その上で、
「うちは価格よりスピード重視」なのか
「少し時間がかかっても高く売りたい」なのか
売主自身の優先順位を明確にしておくと、冷静な判断ができます。
③ 「売却活動中にできる工夫」に目を向ける
・写真撮影前に掃除・整理整頓
・不要家具の処分
・日当たりの良い時間帯に内見設定
など、「印象アップのちょっとした努力」で、買主の印象はガラリと変わります!
愛着と査定のズレは“当たり前”。でも工夫でカバーできる!
-
リフォーム代=査定アップには直結しない
-
査定は“現況”と“市場相場”で決まる
-
愛着は評価されないけれど、印象には影響する
-
売却時の工夫や戦略で“希望価格”に近づけることは可能!
家の価値は「お金」だけじゃありません。
あなたの手で育ててきたその家には、確かな“物語”があります。
その物語を伝えつつ、冷静にマーケットを見て、
最良の売却ができるよう、まずは現実と向き合うことから始めてみてください。
稀に、
「なんでリフォームしたのにプラスにならないんだ!」
「そんな査定なら他に行く!」
なんて言ってこられる方もおります。
上記の様に、気持ちは分かります。
でも、当社の査定結果と市場は違うので、
「希望価格で市場に出すことはできますが、成約の可能性は低く、時間もかかるかと思います」
と、言っています。
査定額が高いから、それで売れるではありません。
あなたが仕事をしていて販売している商品やサービスと、不動産は同じです。
辛いのですが、それが現実なんです…。
リフォームは、それまでに住むことでのメリットがたくさんあった。
それは、買主には無関係になってしまうんです…。
記:宅地建物取引士 原田