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Vol.186 親のために、子どものために家を買う。ん?

不動産のアレコレ

親のために、子どものために家を買う

税金やローン的に問題ない?家族のための住宅購入に潜む“落とし穴”




家族のために家を買うという選択を考える方も多いのではないでしょうか?



「親が高齢になったから、近くに住ませたい」


「結婚した子ども夫婦に家を買ってあげたい」


このように“家族のために家を買う”という相談が、近年とても増えています。



少子高齢化が進み、親子の距離が物理的にも心理的にも近づいている今、


「親の安心」や「子の安定のために家を」という気持ちは自然な流れと言えます。



しかし、不動産の購入には税金・ローン・名義といった複雑な要素が絡みます。


「良かれと思ってしたことが、後からトラブルになった…」というケースも少なくありません。



本記事では、「親や子のために家を買う」際に気をつけるべきポイントを、


税金・住宅ローン・所有関係の観点から解説します。




1. 「親のために家を買う」ケースのよくある形


親のために家を購入する場合、大きく分けて次の3つのパターンがあります。



(1)自分名義で家を買い、親に住んでもらう


もっとも一般的なのがこのケース。


たとえば、離れて暮らす親を呼び寄せるために、自分が住宅ローンを組んで購入し、親に住んでもらうパターンです。


この場合、親に家賃をもらうかどうか?で税務上の扱いが変わります


■家賃をもらわず無償で住ませる → 問題なし

家賃をもらう → 「不動産所得」として確定申告が必要


また、親がその家に住み続けることで、相続時に「小規模宅地等の特例」が使える場合もあります。
(※同居親族または相続人の居住条件によって異なります)



(2)親名義で購入し、自分が費用を負担する


一見すると「親名義で買っただけ」ですが、この場合は税務上、“贈与”とみなされるリスクがあります。


たとえば、

頭金や全額を子どもが負担

ローンの返済を子どもが代わりに行う


これらは、親が「自分で支払っていない」ため、贈与税の対象になる可能性が高いです。


ただし、一定の条件であれば「住宅取得資金の贈与税非課税制度」が使える場合があります。
(後述で詳しく説明します)



(3)共有名義で購入する


「親と子の共同出資で購入する」ケースもあります。

この場合、出資割合に応じた持分登記を行えば問題ありません。


ただし、登記割合と実際の支払い割合が異なると、

「実質的な贈与」として課税対象になることがあるので注意が必要です。




2. 「子どものために家を買う」場合の注意点


親が「子どものために家を買う」場合にも、税務上・ローン上の注意点があります。



(1)親名義で家を買い、子どもに住ませる


この場合、親がオーナーで、子どもは「無償で借りている」形になります。


基本的には問題ありませんが、将来的な相続を見据えた計画が重要です。


親が亡くなったときに、子どもがその家を相続する際、相続税や登記の名義変更費用が発生します。


また、他の兄弟姉妹がいる場合には「遺産分割トラブル」になることもあります。



(2)子ども名義で購入し、親が資金を出す


このパターンも非常に多いですが、ここが贈与税の落とし穴です。


たとえば、

親が頭金を出す

親が全額を一括で支払う


こうした場合、税務上は「子どもへの贈与」とみなされます。


しかし、「住宅取得資金贈与の特例」を使えば、一定金額まで贈与税が非課税になります。




3. 住宅取得資金贈与の特例とは?


親や祖父母から、子や孫へ住宅購入資金を贈与した場合、一定の金額までは贈与税がかからない制度です。



<令和6年度(2024年)時点の非課税枠>

住宅の種類 非課税限度額
省エネ等住宅(認定長期優良住宅など)  最大1,000万円
一般住宅  最大500万円

<主な適用条件>
贈与を受ける側(子どもなど)が 18歳以上
年収2,000万円以下
資金は「住宅の取得または建築」に充てること
贈与を受けた年の翌年に確定申告が必要

この制度を使えば、親が子どもに頭金を援助しても、多くの場合は税金がかかりません。


ただし、贈与時期・入金ルート・申告書類などに不備があると、非課税が適用されないこともあります。




4. 住宅ローンの組み方にも注意!


家族のために家を買うとき、

「誰がローンを組むか」、「誰が住むか」で、住宅ローン控除の適用が大きく変わります。



● 原則:住宅ローン控除は“自分が住む家”でないと使えない

たとえば、

自分がローンを組んで、親に住ませる → 控除は使えない

子どもがローンを組んで、自分が出資 → 子どもが住むならOK


つまり、「ローンを組む人=実際に住む人」でないと、住宅ローン控除(所得税の控除)は適用されません。



● 親子リレーローンという選択肢

親子で共同でローンを組み、世代を超えて返済していく「親子リレーローン」もあります。


これにより、親の年齢が高くても、子どもの収入を合算して長期ローンを組めるため、
「親のために家を買いたい」場合にも有効です。


ただし、ローン名義や返済義務の所在を明確にしておかないと、後々トラブルになることがあります。




5. 名義と登記のルールを理解しておこう


住宅の購入では「誰の名義で登記するか」が非常に重要です。


購入費用を負担した人 → 原則としてその人の名義で登記

実際にお金を出していない人の名義 → 贈与とみなされるリスク


  • 【NG例】


子どもがローンを組んで支払いをしているのに、親の名義で登記している場合、


子どもが親にお金を「贈与した」とみなされる可能性があります。


登記と実際の資金負担は必ず一致させることが、税務上も法律上も基本です。




6. 家族間の「良かれと思って」がトラブルになることも


親子間の住宅購入では、感情が優先されるあまり、後から「思っていたのと違う」というケースも少なくありません。



よくあるトラブル例


■名義を親にしたため、相続時に兄弟間で揉める

ローン返済を子どもが続けられず、親が肩代わり

贈与税の申告漏れで後から追徴課税

親が住んでいた家を子が売ろうとしたら、名義上売れなかった


どれも、「最初にきちんと確認しておけば防げた」ケースです。




7. 相談すべき専門機関・窓口


家族のために家を買う場合、税理士・司法書士・金融機関など、専門家に相談することでリスクを大幅に減らせます。


内容相談先
税金・贈与・相続  税理士、税務署
登記・名義  司法書士
ローン審査・借入条件  銀行・住宅ローン専門会社
トラブル・法的紛争  弁護士、消費生活センター


家族の“思いやり”を、安心の形にするために親や子のために家を買うことは、

「家族を想う気持ち」から生まれる、とても尊い選択です。


しかし、不動産の世界では、「善意」と「法律・税制」は必ずしも一致しません。


誰が名義を持つのか

誰が住むのか

資金はどこから出るのか

贈与や控除の条件を満たしているか


これらを一つずつ丁寧に整理しておくことで、家族全員が安心して新しい暮らしを迎えることができます。


もし迷ったときは、不動産会社だけでなく、税理士や司法書士にも相談を。



記:ファイナンシャルプランナー  菊池


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