
Vol.237 立ち退きを強いられた際の適切な対応方法
立ち退きを強いられた際の適切な対応方法
― 「戦う」より「得する」選択をするという考え方 ―
ある日突然、大家さんや管理会社からこんなことを言われたらどうでしょう。
「建物を取り壊すので、退去してください」
「自己使用することになりました」
「老朽化が進んで危険なので立ち退いてほしい」
多くの賃貸入居者にとって、立ち退きの通知は寝耳に水です。
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ここに住み続けるつもりだった
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引っ越す予定なんてなかった
-
納得できない
そう思うのは当然です。
ですが、感情だけで動いてしまうと、時間もお金も失う結果になりかねません。
本記事では、立ち退きを求められた際に「現実的に一番損をしない対応方法」を、
不動産のプロの視点から分かりやすく解説します。
1.そもそも「立ち退き」は拒否できるのか?
まず、検索で最も多い疑問がこれです。
「立ち退きって拒否できるんですか?」
結論から言うと、ケースによります。
【立ち退きには「正当事由」が必要】
賃貸借契約では、貸主(オーナー)が一方的に契約を終了させることはできません。
法律上、立ち退きを求めるには、「正当事由」が必要とされています。
正当事由として認められやすい例
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■建物の老朽化・耐震性の問題
■建て替えが必要な状態
■オーナー自身や親族が住む必要がある
■長期間の使用により建物維持が困難
これらに該当する場合、入居者側は拒否しづらいのが現実です。
2.「拒否し続ければ勝てる」は大きな誤解
ネット上では、こんな意見も見かけます。
「立ち退きは拒否できる」
「裁判すれば入居者が有利」
確かに、理屈の上ではそうです。ですが、現実はそこまで単純ではありません。
最終的には「裁判所の判断」に委ねられる
話し合いがまとまらなければ、最終的には裁判になります。
しかし、ここで冷静に考えてください。
【裁判の現実】
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解決までに1年以上かかることもある
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弁護士費用がかかる
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精神的ストレスが大きい
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結果が必ずしも入居者有利とは限らない
つまり、
裁判=時間と労力を消耗する選択
であるケースがほとんどです。
3.「住み続けるために戦う」ことが本当に得か?
ここで一つ、重要な視点があります。
仮に裁判で勝ったとしても、
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建物は古いまま
-
オーナーとの関係は悪化
-
いずれ再度立ち退きの話が出る可能性
という状況は変わりません。
そのため実務上は、
「戦って住み続ける」より「条件を引き出して引っ越す」
方が、結果的に得になるケースが多いのです。
4.立ち退きを求められたら、まずやるべきこと
感情的になる前に、まずは以下を冷静に確認してください。
① 立ち退き理由の確認
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書面か口頭か
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具体的な理由は何か
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期限はいつか
理由が曖昧な場合は、必ず書面での説明を求めましょう。
② すぐに「拒否」や「了承」をしない
ここでやってはいけないのが、
感情的に拒否する
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その場で「分かりました」と答える
どちらもNGです。
正解は、
「内容を確認させてください」
この一言です。
5.「さっさと引っ越す」という選択が合理的な理由
少し身も蓋もない言い方になりますが、立ち退き理由が正当事由に近い場合、
粘るメリットはあまりありません。
なぜなら…
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どうせ最終的には出る可能性が高い
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時間をかけても条件が良くなるとは限らない
-
次の住まい探しが後手に回る
それなら、
早めに引っ越す前提で動いた方が有利
です。
立ち退き時に「必ず交渉すべきこと」として、最も重要なポイントがあります。
引っ越す=何ももらえない
ではありません。
むしろ、
引っ越す代わりに条件を出してもらう
という発想が大切です。
6.オーナーにお願いしてよい代表的な項目
立ち退き交渉で、実際によくあるのが以下です。
① 引っ越し費用(実費)
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引っ越し業者代
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荷造り費用
② 次の住まいの初期費用
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敷金
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礼金
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仲介手数料
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保証会社費用
③ 家賃差額の補填
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今より家賃が上がる場合、その差額を一定期間補填
これらをまとめて、「立ち退き料」として支払ってもらえるケースもあります。
~「お願いしてもいいの?」と思った方へ~
これは、お願いして問題ありません。
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オーナー側も早く解決したい
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裁判はオーナーにとっても負担
-
スムーズな合意が一番ありがたい
からです。
むしろ、
何も言わずに引っ越してしまう方が、損をしているケースが多いのです。
交渉のポイントは「感情」ではなく「現実」です。
交渉時に大切なのは、
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怒らない
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責めない
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感情論にしない
そして、こう伝えることです。
「引っ越し自体は検討できますが、費用面の負担が厳しいため、ご相談できませんか?」
このスタンスが、最も話が進みやすくなります。
7.不動産会社を味方につけるという選択
立ち退きの場面では、
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法律
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慣習
-
相場
が絡むため、個人での判断が難しいことも多いです。
そんなときこそ、不動産会社に相談する価値があります。
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交渉の落としどころ
-
次の住まい探し
-
初期費用の整理
これらを一括で考えられるからです。
立ち退きを求められたとき、大切なのは「戦うこと」ではありません。
いかに損をせず、次の生活を良くするか。
その視点を持つことで、立ち退きは決して不幸な出来事ではなくなります。
当社では、
立ち退きのご相談から、次のお住まい探し、条件整理まで
入居者側の立場でサポートしています。
一人で抱え込まず、「今の状況で一番良い選択」を一緒に考えてみませんか。
記:宅地建物取引士 原田